野外調査実習のようす

調査研究の原点は、フィールドワークです。

フィールドワークというのは、文字通り野外での調査です。

井内研究室では、対象となる場所は、「湖」がほとんどです。

湖において、湖底地形を調べたり、湖底の泥を採取したりしています。

野外で収集したサンプルやデータは、その後、大学の実験室に持ち帰り、様々な分析や実験を行います。

そうすることで、湖の歴史(形成過程・水位変化・塩分濃度変化)や、湖に影響を与えた気候変動、人間活動や地震・洪水などの自然現象復元して、その原因や影響の程度を考察します。

 

琵琶湖 2014年
琵琶湖 2014年
霞ヶ浦 2014年
霞ヶ浦 2014年

ここでは、2014年5月に実施した琵琶湖での野外調査実習を例にして、簡単に紹介します。

湖での調査は、船上で行うことが多いです。

琵琶湖では、滋賀県立琵琶湖博物館が所有している小型調査船を使いました。

この船は最大8人乗船可能で、作業がしやすいオープンスペースや、ロープなどを巻き取るウインチ、位置情報や湖底情報を記録するGPSや魚探、音波探査装置などが常備されています。

船での作業に絶対必要なもの。

それは、ライフジャケット(救命胴衣)です。

しっかり装着します。

服装は、湖の上では、日差しの照り返しが強いので、日焼け止め対策は必須です。

長そでの上着や、帽子はしたほうが良いです。また、作業は、軍手も必要です。水にぬれることが多いので、長靴もあったほうがいいです。

波が穏やかなとき
波が穏やかなとき
ひとたび、波が高くなると
ひとたび、波が高くなると

船上での作業は、人によっては想像以上に大変なことがあります。

それは。。。

 

船酔い

 

波が高いときの調査では、ときにはダウンします。

しかし、こればかりは仕方ありません。

 

船酔いの対処は、波を真に受けず受け流す!できるかぎり遠くを見る! これくらいしかありません。波が高いときの調査は稀ですが、それはそれで記憶に残るものになります。

 

船上調査では、普段なら絶対に見れない位置からの眺めを独り占めできます。

本当に、船からの眺めは格別です。

これは、一度は経験してほしいです。

 

橋を下から見上げる

 

鳥が魚をとるために、急降下してダイブする

 

湖からの陸上の景色

 

信号や交通渋滞のないストレスフリーな空間

 

ほかにもいっぱいありますが、それは自分自身で経験してください!!!

 

それでは、次から調査実習の具体的なものについて紹介します。

 

野外で採取したサンプルとともに (2014年5月 霞ヶ浦にて)
野外で採取したサンプルとともに (2014年5月 霞ヶ浦にて)

エクマンバージ採泥器による湖底表層堆積物の採取

湖沼全域での底質環境を知るために、湖底表面部分の地層をサンプリングするときによく用いる方法です。

エクマンバージ採泥器は、UFOキャッチャーのような原理です。バケットと呼ばれるショベルカーの先端部が対になったものを、湖底に沈めて、その後、ロープにつながったメッセンジャーと呼んでいるおもりを落として、このバケットを閉じさせます。こういう原理で湖底表面の泥を採取するものです。

 

この採泥器で採取したサンプルからは、

水深が浅かったり、河口に近いと砂の成分がたくさんはいってきます。その一方で、水深が深い地点では、泥の成分が卓越します。また、湖底が貧酸素になっている場所ではヘドロがたまっています。臭気なども感じることができるので、湖底のようすを手っ取り早く知ることができる方法です。

自重式採泥器(グラビティーコアサンプラー)による柱状試料の採取

柱状試料(コア)は、湖底下の地層をパイプ状に採取したものです。一般的には、地層は、湖底の表面で、その時の環境を記録しながら積み重なるように順番にたまっていきます。そのため、地層は、湖底表面が一番新しく、深くなるにつれて古くなります。つまり、地層の下から上への変化は、古い時代から新しい時代の変化にそのまま読みかえることができます。もちろん、その変換は簡単ではありませんが、いろいろな方法を駆使して、地層に年代値を与えて、実験室でおこなうさまざまな分析からその当時の環境を推定していきます。

 

この柱状試料を採取するのは、いくつか方法がありますが、この自重式採泥器を用いると湖底表面から数十センチの地層を乱さずに採取することができます。

具体的には、ロープにつながれた採泥器を湖に投下します。採泥器の重さ(場合によっては、重りをつけます)によって、その自重でパイプを地層中に貫入させます。このタイプの採泥器は、引き上げるときに、自動的にパイプの下部でふたが閉まる仕組みになっています。

 

採泥器の上げ下げは、人力でおこなうことが基本です。水深が深いとその分たくさんロープをあげないといけません。一日が終わるころには腕がパンパンになっているかも!?

 

これなら、深い水深でも、体力の持つ限り、泥を採取できます。

押し込み型柱状採泥器による柱状試料の採取

この採泥器は、とくに水深が浅いところでの調査に最適です。

採泥器にロッド(2mの棒)を繋いでいって、採泥器の先端が湖底に到達したら、ロッドを手で押し込んで地層を採取するものです。

このタイプの採泥器では、全長1mの未攪乱柱状試料が採取できます。

 

地層採取が感覚的にもわかります。もし、軟らかい地層ならそんなに力を入れなくても押し込めます。一方で、固い地層になっていると、なかなか押し込むのが大変です。

 

作業のようすを動画に撮りました。ぜひ見てください。

上手く取れると、とても満足した気分になります。

ぜひ経験してほしい調査のひとつです。

2017年 秋の榛名湖
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2015年冬 夕刻の野尻湖
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2013年夏の琵琶湖 水面の奥底にたまる地層は何をモニタリングする?
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霞ヶ浦 2014年
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野尻湖!! 実習でもいくよ!!
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試料の採取作業中
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